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暴力団

暴力団 (新潮新書)

暴力団」。

あるいは「ヤクザ」、「極道」、「任侠」...呼び方によってイメージも異なりますが、その実態を知る人は少ないのではないでしょうか。

著者の溝口敦氏は元警察官でもヤクザでもなく、半世紀近くにわたり暴力団を取材し続けたノンフィクション作家です。

組織の垣根を超えて多くの暴力団を取材し続けた裏世界に精通した作家であり、過去には山口組に関する著書を巡って脅しを受け、左背中を刺され重傷を負った経験を持っています。

本書は暴力団同士の抗争に深く迫ったノンフィクションではなく、今日現在で23団体指定暴力団)、1万8100人の構成員を抱える暴力団の実態を分かり易く解説した1冊です。

まずは山口組に代表される広域団体の仕組み、直系組長(直参)、若頭舎弟といった独自の業界用語の解説にはじまり出世の仕組みなど、馴染みのない人にとって業界独自のルールは新鮮に映ることでしょう。

また企業でいえば売上を得る事業を「シノギ」と呼びますが、伝統的な資金獲得手段として覚せい剤恐喝賭博ノミ行為を挙げています。

さらに昔と違い暴力団系の建設会社が公共事業の下請けに入ることが難しい現在では、解体業産廃処理によっても資金を得ているようです。

続けて入れ墨指詰め(エンコ詰め)といった伝統的な習慣、最近では非課税である新興宗教団体をケースなど今の暴力団を知ることができます。


ここまで解説してき暴力団は日本独自の存在ですが、続いて海外のマフィア(犯罪組織)との特徴を比較する試みもされています。

やはり際立つ違いは、諸外国では組織犯罪集団そのものを違法としているケースが殆どなの対し、日本では暴力団対策法組織犯罪処罰法という法律はあるものの、暴力団の存在そのものは認めている点です。

分かり易いい例を挙げれば、暴力団が繁華街などに看板を掲げて事務所を構えることは容認されており、存在が違法とされている諸外国ではそれだけで摘発対象となる点は大きく異なります。

暴力団とかかわり合いを持たずに人生を過ごすに越したことはありませんが、もし思いがけず出会ったらどうしたよいか?

そうした場合の対処法に関しても、経験・知識豊富な著者がアドバイスを送っています。

身近に暮らしながも目に見えにくい暴力団に対する基礎知識を与えてくれる本書は、ある種のサバイバル指南といえるかも知れません。