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すべては一杯のコーヒーから

すべては一杯のコーヒーから (新潮文庫)

著者の松田公太氏による起業ノンフィクションです。

内容については本書の紹介文をそのまま引用させていただきます。
27歳で起業を志し大手銀行を退職した青年は、体当たりの交渉でスペシャルティコーヒーの日本での販売権を得た。
銀剤に待望の1号店を開業した後は、店内に寝袋を持込み泊まりこみで大奮闘。
ビジネスにかける夢と情熱は、コーヒーチェーンを全国規模にまで大成長させた。
金なし、コネなし、普通のサラリーマンだった男になぜできたのか?
感動のタリーズコーヒージャパン起業物語。
本書ではじめて"スペシャルティコーヒー"という単語を知りましたが、簡単に説明すると高品質なコーヒー豆を使用し、焙煎から抽出までを高いレベルで実現したコーヒーのことを指します。

価格も品質に比例するため、300円~500円くらいのメニューが一般的ではないでしょうか。

"スペシャルティコーヒー"の分野では、スターバックスが有名なチェーン店ですが、同社が豊富な会社資金で日本上陸を果たしたのとは対照的に、タリーズは少ない個人資本によって日本出店を実現しました。

つまり信用度が低いため金融機関や不動産会社との取引は厳しく、失敗したときのリスクも高いことを意味します。

一方で組織の意思決定が迅速で柔軟であること、そして何よりも成功したときのリターンが大きいといったメリットもあります。


創業者であり代表取締役社長であった松田氏の生い立ちや起業に至るまでの経緯は、これから起業を目指す人のみならず多くのサラリーマンに勇気と感動を与えてくれます。

起業家が執筆した本の中でも高いレベルの作品だと思います。


ただし個人が起業した会社が急激に成長してゆく過程で社内意見の食い違いや同業者たちとの対立は避けて通ることは出来ず、決してキレイ事だけでは成功できません。

本書で紹介されている内容以外にも多くのキレイ事では片付けるのできない出来事があったことは間違なく、起業家の本を読むときに気をつけて欲しい点です。

ちなみに松田氏は2006年にタリーズの代表取締役を退任し、現在は参議院議員として活動しています。

またタリーズコーヒージャパンは、飲料メーカ・伊藤園のグループ会社として現在も順調な成長を続けているようです。

もちろん私がその心境の変化を知る由もありませんが、松田氏にはタリーズ起業の時と同じ情熱を持って政治に取り組んでもらいたいと願うばかりです。