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水滸伝 11 天地の章

水滸伝 11 天地の章 (集英社文庫 き 3-54)

11巻目にしてようやく「北方水滸伝」も後半に突入します。

禁軍との対決が本格的に迫ろうとしているさなかに、梁山泊にとって衝撃的な事件が起こります。

梁山泊に君臨する宋江・晁蓋2人のリーダーのうち、晁蓋が暗殺されてしまうのです。

2人については以前紹介しましたが、晁蓋は前線で指揮を採るタイプのリーダーであったため、それが災いして無防備な瞬間を狙われて暗殺の標的となったのです。

じつは晁蓋が暗殺される前から、宋江と梁山泊の将来についてたびたび意見がぶつかるようになります。

晁蓋は梁山泊の軍勢が3万人に達した時点から宋へ対して攻勢に転じるべきだとし、宋江は軍勢が10万人になるまでは慎重に事を進めようとします。

つまり晁蓋が積極的かつ攻撃的な方針であり、宋江は消極的、守備的な考えを持っているのです。

これは性格や戦略の相違から来るもので、いずれか一方が正しいという訳ではありません。

例えば経営者を見ても、事業拡大に慎重な姿勢をとる社長もいれば、積極的に拡大しようとする社長がいるのと同じことです。

ただし少なくともトップの地位にいる2人が正反対の方針を打ち出せば、「船頭多くして船山に登る」という状況になりかねません。

歯に衣着せぬ発言をする魯達(魯智深)は、"不幸中の幸い"のような意味の発言をしていますが、少なくとも梁山泊のリーダーが事実上1人に絞られたという状況は、決して梁山泊の将来にとって悪いことではないという核心をついた発言ではないでしょうか。

一方で多くの人が、すべてを部下に委ねる"宋江"よりも、積極的に部下を率いていく"晁蓋"の方がリーダーとしてふさわしいと思うのではないでしょうか。

原作ではイマイチ存在感を出せなかった宋江ですが、今後「北方水滸伝」で彼がどのように梁山泊を率いてゆくのかが楽しみです。